老後資金に対する不安は「感覚的」なものが多く、実際にいくら準備すればいいのかを知らないまま漠然と心配している人がほとんどです。多くの人は2,000万円という数字にとらわれていますが、「本当に必要な金額」は人それぞれ。だからこそ、“平均値”と“自分の現実”を正しく知ることが、老後不安から抜け出す第一歩です。
2019年に金融庁の報告書が発端となり、「老後資金2,000万円問題」が話題になりました。これを見て、「自分も2,000万円ないと老後が破綻する」と思い込んだ方も多いのではないでしょうか。
しかし、2,000万円というのは、ある条件下での**「モデルケース」**にすぎません。
- 公的年金の月額:約21万円(夫婦2人)
- 支出の月額:約26万円
⇒ 毎月5万円の赤字×30年=約2,000万円
実際には、「住居費」「医療費」「働き方」「家族構成」によって必要額は大きく異なります。つまり、「みんな2,000万円必要」と思って貯めていても、自分の生活に合っていなければ意味がないのです。
では、実際に老後資金をどれくらい準備しているのでしょうか?
金融広報中央委員会の2023年の調査によると、60代の貯蓄額の平均は以下の通りです:
- 60代世帯の金融資産:平均 約2,350万円(中央値:1,500万円)
- 70代:平均 約2,150万円(中央値:1,300万円)
ポイントは、「平均」と「中央値」の違いです。平均は一部の資産家が押し上げている数字で、実態に近いのは中央値(真ん中の値)。つまり、多くの人は1,000万~1,500万円前後の準備でリタイアしていることがわかります。
また、退職金制度のある企業では「退職一時金や企業年金」で老後資金を補っていますが、近年はその額も減少傾向にあり、「自分で準備する時代」へと変化しています。
老後資金は、「みんな2,000万円必要」という単純な話ではありません。あなた自身の生活スタイルや家計に合わせた“自分だけの目標金額”を把握し、無理なく備えることが大切です。
まずは、「自分はいくら必要なのか?」を明らかにし、「どんな準備を、いつから、どんな方法で」していくかを計画すること。それが、漠然とした老後不安を、前向きな人生設計へと変える一歩になります。
老後とは、ある日突然やってくるものではありません。生活スタイル、支出のクセ、家族との関係……すべてが「今の延長線上」にあります。
将来に対して不安を感じたときは、数字から目を背けるのではなく、一緒に見える化してみませんか?
不安を「知識」に変えることが、人生後半の安心と自由をつくる近道です。